201501 Mac nut trees
 ナッツリターン事件が話題となった。大韓航空の副社長が自社便のファーストクラスに搭乗した際、出されたナッツの出し方に不満を持ち、飛行機を戻させ、客室責任者を飛行機から降ろさせた事件だ。その際に出されたナッツはマカデミアナッツで、事件後、韓国のオンラインショップではマカデミアナッツの売り上げが20倍に跳ね上がったそうだ。

 ハワイのお土産の定番と言えば、マカデミアナッツチョコレート(マカチョコ)だ。昔、日系人が考案したロングセラーだ。会社でお茶の時間に、白い恋人、かもめの玉子、萩の月、笹団子、うなぎパイ、八つ橋、もみじまんじゅう、カステラなどのお裾分けが来ると、ああ、誰かがあそこに行ったんだなあと、その場所がすぐに頭に浮かぶ。そういう意味では、海外旅行のお土産の定番でマカチョコに勝るものはないだろう。

 ハワイ産のマカデミアナッツの大部分が、ここハワイ島で栽培されている。ハワイ島には約700のマカデミアナッツ農家がある。ちなみにコーヒー農家も約700軒。そして、そのマカデミアナッツ農家の多くがコーヒー農家でもある。

 先月号に記したように、昔の日系人のコーヒー畑は列に植わっていない。溶岩を避け、植えやすい場所に植えたからだ。そして、多くの場合、コーヒーとマカデミアナッツが混ざって植えてある。最近の畑は大きな掘削機で溶岩を砕くので、コーヒーを列に植える。その中にマカデミアナッツがあると農作業の邪魔なので、マカデミアナッツは植えない。つまり、マカデミアナッツとコーヒーの混在した畑は日系人の古い畑に限られる。

 コナのティピカ種は品種改良されていないので、直射日光に弱い。フアラライ山麓のコナは午前のうちから山から雲が下りてくる。日差しが柔らかいので、日陰樹がなくともティピカ種は問題なく育つ。しかし、雲が下りてくる時刻の少し遅い標高の低い地域などでは、背の高いマカデミアナッツがあると、より直射日光が遮られる。一方、コーヒー相場は昔から値動きが激しい。昔の日系人はコーヒー畑にマカデミアナッツを植えることで、日陰樹として活用するとともに、収入の多角化を図った。マカチョコのお土産としてのブランド確立はコナの日系人コーヒー農家の収入の安定に大いに貢献した。

 しかし、近年ハワイ島のマカデミアナッツは不況産業だ。オーストラリア産のマカデミアナッツの方が安いので、マカチョコ用のハワイ産への需要は減少。頑固にハワイ産にこだわる良心的なマカチョコ業者もあるが、多くは豪州産に変わってしまった。

 原料のマカデミアナッツは豪州から、ココアはアフリカから輸入して、ハワイで加工する。確かに加工する場所はハワイなので、メイド・イン・ハワイと表示され、ハワイアン・マカデミアナッツ・チョコレートが店頭に並ぶ。このハワイアンという形容詞はナッツにもチョコにも掛からない不思議な形容詞だ。それでも、日本からの観光客は喜んでお土産に買っていき、お土産をもらった人は、どこへ行ったかを聞かなくても、「ああ、ハワイに行ったのか。うらやましいなあ」と思う訳だ。誰も豪州のナッツとアフリカのココアの売り上げに貢献したとは思っていない。

 そういう訳でハワイ島でのマカデミアナッツの卸値はこのところ低迷したまま。日系4世・5世のコーヒー農家ではマカデミアナッツを切り倒す所が増えている。そこへもって、ナッツリターン事件を契機として、20倍に跳ね上がった韓国でのマカデミアナッツ特需。久々の明るいニュースだ。今後も韓国の財閥の子女が頻繁かつ定期的にマカデミアナッツ騒動を起こしてくれると、ハワイ島の経済もずいぶん助かる。