201309 Felicia

ハワイ島には台風が来ない。マウナケア・マウナロアなどの4000m超の山が盾になり台風の勢力を弱めたり、進路を変えているという説や、単に運が良かったという説がある。その珍しい台風が7月末に来た。ハワイ島の中心を目指し真っ直ぐ西進して、すわ、明日は観測開始以来、初の上陸か!と騒ぎになった。ハワイの人は台風に慣れていない。水・食料・ガスボンベなどを買う人の列がニュースで報じられ、明日は消防や警察などを除き、政府機関は閉鎖と決まった。役所、学校、図書館、道路工事など全てお休み。ところが、今回も上陸寸前の数時間で急速に勢力を落とし、あっという間に熱帯低気圧に。ふらっと進路を変えて島の北を通り過ぎてしまった。本当にマウナロア山さまさまだ。

熱帯低気圧に弱まったとはいえ暴風雨は来た。農作業は休み。家でお茶を飲みながらテレビを見て過ごした。外が嵐なのに家の中でぬくぬくするのは実に気持ちが良い。ハワイの人々が慣れぬ台風にアタフタするのをニュースで見てほほえましくさえ思った。

翌朝、畑に出てビックリ。アタフタアタフタ。どえらい被害だ。復旧作業の日々が始まった。せっかくのアース・ウィンド&ファイアーのコンサートも断念だ。

うちには8歳の木が植えてある山側の畑と、苗木を植えて8ヶ月の海側の畑がある。山側の畑の被害は微少。2本ほどコーヒーの木が根こそぎ斜めに傾いていただけ。傾いた木はたわわに実を付けていたが、膝の高さに剪定した。根が切れた状態での剪定だとショックで死ぬ可能性は排除できないが、剪定しないと、切れた根は、あれだけ多くの実に栄養を送れないし、その木自体の重さに耐えられない。かなりの確率でやがて枯れてしまう。それよりは、実を全て諦めることになるが、剪定したほうが得策と判断した。

問題は海側の畑。そこは昨年、家の前の3エーカーの土地が売りに出たので、買い足して2100本強のコーヒーの苗木を植えた新しい畑。苗木を植えてからほぼ8ヶ月。水と肥料を欠かさず丹精をこめて育てた。樹高は1メートルを超え、来年にはいくらかの収穫が期待できるほど順調に成長していた。その2100本の木のほとんどが傾いた。根元はぐらぐら。さらに、約200本は根が切れて横倒しになっている。土の状態を改善する為に有用微生物をまいて土をふかふかにしていたのが裏目に出たのかもしれない。

ぐらぐらになった木は土を踏み固めて、しっかりと立つようにした。倒れた200本は山側の2本とは違い剪定をせずに、生え際のそばの地面に1.2mの鉄の棒を金槌で打ち込んで、針金でくくり付けて支えた。8歳の山側の立派な大人の木と違い、海側の8ヶ月の木はまだひ弱で、根が切れた状態で剪定したらショック死する確率が高い。しかし、幸い、まだ実がないので木の再生に全ての栄養を使えるし、根が支えねばならぬ木の重量も軽いので、支柱で固定すれば枯れないと判断した。

そんなこんなで、3週間後、ろくにゴルフの練習をしないまま、Big Island Amateur Championshipに出場した。昨年は2位(銀)だった。今年は3位(銅:ブロンズ)以内を目標に出場したものの、惨憺たる結果に終わった。嵐の後の復旧作業で忙しかったから仕方がないと自分をなぐさめながら帰宅して、ふと眺めると畑がブロンズ色に見える。焼きが回ったかと思ったが、よく見ると本当にブロンズ色をしている。傾いた木にも支柱で支えた木にも、全ての枝の先に新しい葉の芽が生えてきた。ティピカ種の若い葉はブロンズ色で、葉が大きく成長するにつれて緑色に変色する。これがティピカ種の特徴。若芽がいっぱいで畑全体がブロンズ色に輝き始めた。どうやら無事に再生しているようだ。