202002 pumpkin
今はカボチャは育てていないが、ひと頃、日系人の友人たちの間では、山岸農園といえばコーヒーよりもカボチャ。家の横に勝手にカボチャが生えてきた。完全な自然農法。肥料も与えず、何の世話もしないのに、甘くて美味しい。コーヒーはあんなに丹精込めているのに、ほったらかしのカボチャの方が人気なのは複雑な心境だ。結局、美味しいのは人ではなく、植物自身の手柄。農業が奥深い点だ。

ところで、有機栽培は質が良いイメージがある。しかし、コーヒーに関しては、私の個人的な経験では、有機だからといって美味しくなるわけではない。私が別の場所に所有するノニ・プルーメリア・ハチミツ畑は有機認証を取っているが、コーヒーに関しては有機認証は取っていない。ただ、美味しいコーヒーを作りたいだけだ。

一般に、化学肥料を与えるコーヒー畑は、春に実がたくさん生りすぎて、実が成長する夏に根が吸い取れる栄養が追い付かずに、実が痩せてしまうことがある。有機栽培だと、実の数が少ないので、その悩みは減るが、そもそも施肥が足りずに、栄養不足に陥る農園が多い。コーヒーはどんな栽培方法でも、全ての実が健康に育つ訳ではない。有機であるか否かよりも、不健康な実を除き、健康な完熟実のみを摘むことの方が美味しいコーヒーを作るためには重要。コーヒーを摘むピッカーの働き次第だ。

私のコーヒー農園は殺虫剤や除草剤は使用しないし、有機肥料を与えているが、一部、化学肥料も使用するので有機ではない。コナの一般的な農園は3年ごとに剪定するが、私は昨年から2年ごとに剪定することにした。生産量は半分に抑え、根の大きさ当たりの実の数を制限して、栄養不足にならないようにするため。さらに、コーヒーの木には有機肥料を与えながら、列に植えたコーヒーの列と列との間の雑草(芝生)には化学肥料を与える。雑草を積極的に伸ばして、刈った雑草をコーヒーの根元に寄せて自然の堆肥とする。ゆっくりと栄養素に分解して、コーヒーに負荷がかからないように工夫しているが、いかに収穫シーズン終了まで栄養分を持たせるかは、毎年、悩ましい問題である。

ところで、有機肥料も化学肥料も便利だが、窒素は与えすぎると農地の外に流出して環境に悪い。日本全体では肥料として農作物に与える窒素の量は年間50万トン程だが、家畜の飼料として輸入する穀物には、その倍以上の窒素肥料が使われているそうだ。つまり、飼料の形で、大量の窒素を輸入している。これが卵や肉や牛乳になり、窒素のほとんどが生ごみや便尿の形で流出する。これを肥料として農地へ還元できれば、日本の農業は化学肥料を使わずに済み、環境にも良いが、その実用化はコスト的に非常に難しい。

環境保護のため、我が家でもトイレを使わず、コーヒー畑で用を足せば良いかもしれないが、それは勘弁。お客様も気持が悪るかろう。しかし、世間にはコピールアク(動物がコーヒーの実を食べて排泄した豆)を飲むコーヒー愛好家がいるくらいだから、私のうんちくらいは許容範囲かもしれない。そもそも、畑は鶏や七面鳥の糞だらけだ。

ところで、ハワイ島は田舎なので、下水道は発達していない。大抵の家には敷地内の地中にSeptic Tankが埋めてあり、下水の汚物はタンクの中で、一旦発酵・分解してから、その場で地中に放出される。

実は例の人気のカボチャは、家の横の地中タンクの上に生えて来たもの。確かに、無農薬・無肥料の自然農法だが、栄養満点の場所だから、あんなに美味しかったのか。カボチャ好きの日系人のお友達の皆様、今まで黙っていてごめんなさい。日本語読めないだろうけど。コーヒー好きの皆様、コーヒー畑ではありません。念のため。

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