モーハワイ☆コム

コーヒー摘み上級編



昨日ポストしたコーヒー摘みのビデオに続き、妻の秘技をご披露。

少しわかりにくいが、時折、黒っぽい実を一粒だけ摘まむのが数回ほど映し出されている。黒い実は、選り分けてピッキングバスケットの横に付けたジップロックの中へ入れる。

黒いのは傷んでいるか、過熟したもの(腐敗やカビなどの可能性がある)、またはCBBという害虫に食われたもの。虫食い豆は地面に落としてはいけない。必ず、畑から取り除く必要がある。だからジップロックへ入れる。

また、無理やり実を引っ張ると、枝の表皮まで引き裂いて枝を傷つるので、優しく実を回転させながら枝から切り離す。それと、木の健康を保つために葉っぱも落とさない。

こうやってきれいに摘み取ることがクリーンカップの秘訣。

コーヒー摘みのビデオ


https://youtu.be/J2ixpQo3ITg

コナ・コーヒー収穫、今シーズンの第2ラウンド終了。

ビデオは妻が摘んでいる様子。

早送りではありません。

こんな感じで1日10時間、4カ月間摘み続けます。

理想のコーヒーの味


201909 cherry
いよいよコナ・コーヒーの収穫が始まった。1月まで続く。体重が何キロも落ちるダイエットの数ヵ月でもある。ただ、肉体的には辛くとも収穫は充実感がある。

収穫が始まると忙しくて訳が分からないうちに年を越してしまうので、今のうちに今年を振り返ると、今年、嬉しかったのは、吉幾三さんブランドの珈琲に私どもの豆を採用していただいたこと。それと、市川海老蔵さんが、一時期コーヒーに凝って、そのきっかけとなったのが私どものコーヒーだったこと。彼のブログの写真からの私の勝手な解釈だが。ともかく、成田屋さんに気に入っていただけるだけでも光栄で生産者冥利に尽きる。

生産者冥利といえば、以前、都内で私どものコーヒー豆を扱っていただくお店にこっそり見に行った際に、順番待ちで並んでいたら、目の前の着物姿のご婦人が、腰を屈めてショーケースに並ぶコーヒー豆を覗き、「ハワイの山岸コーヒーをください」と言った。店員が「山岸コーヒーはすぐに売り切れたので在庫がありません」と答えると、「あら残念。あんなに美味しいコーヒーは初めてだったので、お友達に差し上げようと思ったのに」と聞こえてきた。こんな場面に遭遇できるなんて、本当に嬉しい。

こんな身に余る体験をしたうえに、さらに私には夢がある。実に欲深い。それは、ドラマ「相棒」の杉下右京に山岸コーヒーを飲ませること。ドラマのオープニングで杉下右京が自分の机の上でコーヒーを淹れている。そこに隣の課の角田課長が「暇か?」と入って来る。コーヒーに驚き、「警部殿、遂に紅茶からコーヒーに宗旨替えか?」と尋ねる。すると、「いえね、最近、理想のコーヒーに出会ったもので。今までこのコーヒーに気が付かなかったとは、僕としたことがうかつでした」と答える横に、さりげなく山岸コーヒーが置いてあるという設定。さらに、「おや?」「妙ですねぇ」などと呟きながら、コナコーヒーの流通量は生産量よりも多いという産地偽装事件を掘りだす。そして、山岸農園の味を知る右京は、次々と本物と偽物を見分けて、みごと事件を解決するというストーリー。コーヒーを摘みながらこんな妄想にふけると、重労働も結構楽しい。

空想ついでに、私には追い求める理想のコーヒーの味がある。それは、全盛期のルチアーノ・パヴァロッティが歌うNessun Dorma(誰も寝てはならぬ)のようなコーヒー。Nessun Dormaはオペラ「トゥーランドット」のアリアで、パヴァロッティがトリノ五輪の開会式で歌った曲。偶然にも同五輪のフィギアスケートで荒川静香さんが金メダルを取った時の曲と言えば日本人には馴染み深いだろう。イナバウアーの瞬間の「タララララ、ラーララー♪」という例のメロディーだ。

パヴァロッティが歌うNessun Dormaのように、何も邪魔するものがなく澄み渡った透明感、天高く、どこまでも明るく、輪郭のはっきりした甘み、そして、ボリューム感があって情熱的。そんなコーヒーを作るのが理想だ。

なぜ、それを求めるかというと、コーヒーは完璧に育てると、そういう味になる。それがコーヒー本来の味だから。そのためには、その年の天候に恵まれるだけではなく、土とコーヒーの木を健康に保ち、病害虫から守り、秋には健康的に赤々と熟した実だけを丁寧に摘み、それを洗って、きれいに乾燥させる。さらに、比重の軽いものや欠陥豆を丁寧に取り除くなど、年間を通して様々な作業の積み重ねが必要となる。

パヴァロッティの歌声の域に達するのは、かなわぬ夢かもしれないが、一歩でも近づいて、杉下右京や市川海老蔵さんを唸らせたいものだ。もっともっと、クリーンで透明感のあるコーヒーに「なりたやー!」

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コナコーヒー収穫の第一ラウンド終了


201908 pulper
収穫した実を、皮むきと乾燥をしてくれる友人のWet millへ持っていったところ、待ってましたと歓迎を受けた。別に私に会いたかったからではない。うちのコーヒーの実を待っていたらしい。

皮むきの機械は回転式ドラムにギザギザが付いていて、そのすき間にコーヒーの実を通すときにギザギザに引っかかって皮がむける仕組み。すき間が広すぎると皮がむけない。狭すぎるとコーヒー豆(種子の部分)まで削ってしまい、豆が欠ける。よって、シーズンが始まる時にはそのすき間の広さを調節する必要がある。

その調節のためには、うちのコーヒーの実でないとダメらしい。うちはコナで欠陥豆の混入率が一番低い。欠陥豆が多いと、豆が欠けたのは、すき間が狭いからか、それとも、もともと欠陥豆(欠けやすい)だからなのか判別しにくい。また、皮がむけないのは、すき間が広すぎるためか、実が腐って皮が豆に付着しているからか判別しにくい。だから、毎年、欠陥豆の少ないうちの農園の実を使って、調節するそうだ。実験台か。。。。
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コナ・コーヒーの収穫の季節到来。


201908 picking
収獲の第一ラウンド開始。

これから1月まで摘み続ける。

今年はコーヒーの実の生育状況が非常に良い。

こういう綺麗な実を摘むのは楽しい。摘んだ実を入れる袋も新品で気持ちが良い。

でも、毎年、収穫が始まると、忙しくて、訳の分からないうちに一気に年越し。
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コーヒー豆のハンドソート(手選別)


201908 hand sort
コナコーヒーは生豆が綺麗なのが特徴。コーヒー豆はすべてが健康に育つ訳ではないので、生産の各工程において、欠陥豆を取り除く作業を繰り返す。

まず、コーヒーの木を健康に育てる。そうすれば不健康な欠陥豆の比率は減る。害虫対策も行い、虫食い豆の増加を防ぐ。なかでも、コーヒーの生産で最も重要で、かつ難しいのは健康に完熟した実を選り分けて摘むことで、ここが農園主の腕の見せ所。

さらに、収穫後の精製所でも選別は続く。まず、実を水に通し浮いてくる比重の軽い実は取り除く。果皮と果肉を取り除いた後に、再度水に漬けて浮いたものは取り除く。

パーチメントを割ったら、サイズ分けし、極端に大きい物や小さいものは取り除く。次に比重テーブルで比重の軽い豆は取り除く。当農園では採用していないが、農園によっては色選別機で、変色したもの、虫食い跡のある豆を取り除く。

8年前にCBBという害虫がコナに上陸して、虫食い率が上昇した。多くの産地では殺虫剤で対処するが、アメリカは農薬の規制が厳しいので使えない。さらに、他の産地でハンドソート、つまり、人が手作業で欠陥豆を取り除くが、コナでこれをする農園はない。ハワイは人件費が高いので、機械による欠陥豆の選別が主だ。

例外はコーヒーハンターの川島良彰氏の会社のシャンペンボトルに入ったコナコーヒー。毎年、何人もの社員と一緒にコナに来てハンドソートする。飛行機代やホテル代を払って何日もやるから利益は出まい。相当なこだわりだ。

うちの農園も、害虫が上陸した最初の年は、妻と手作業で欠陥豆を取り除いた。すると、麻袋1袋(100ポンド)を選別するのに1週間。3袋で力尽きた。我々の年間生産量は多い年は約50袋なので、全部で丸一年かかる。無理だ。

そこで、開花と収穫の間の春から秋にかけて、全ての木の全ての枝の全ての実を見て、虫食い豆は収穫する前に取り除く事にした。虫は級数的に増加する。増えた後で取り除くのではなく、増える前に取り除く作戦。これで虫食い率がコナで最小になった。けど、手間がかかりすぎるので、コナでこれをする農園は他にないし、たぶん世界にもないだろう。

ところで、日本のテレビや雑誌で、喫茶店のマスターや焙煎士が焙煎前に、生豆を手で選別して欠陥豆を取り除く光景を見かける。日本人マスターの良心的で真心やこだわりを感じさせる感動のおもてなしシーンだ。しかし、経済学的に見れば、これほど、ばかげたシーンはない。本来は、人件費の安い生産地で選別すべき。わざわざ、粗悪のまま日本に運び、何十倍も人件費の高い日本で選別しては割に合わない。マスターの真心には頭が下がるが、地球全体で見れば、効率的な資源配分とはいえない。

コーヒー生産国の労働者の賃金は信じられないほど安い。消費国がコーヒー一杯に1円くらい余分に払って、その分を産地でハンドソートに充てれば、労働者の収入は何倍にもなるし、日本のマスターも真心を安売りしないで済む。その方が効率的な資源配分で、品質は上がるし、コストは下がり、コーヒー業界の生産性は向上する。

ただし、コナは例外。日本よりも人件費が高い。ハワイでは世帯年収740万円で低所得者層、465万円で貧困層とされる。これはオアフ島の統計だがコナも高い。だから、コナコーヒーが害虫被害で流通量が減ったと、あまり怒らないで頂きたい。えっ?他の産地のようにハンドソートしろって? この際だから、思い切って言っちゃうけど、あんたら日本人の人件費はハワイよりもずっと安いんだから、そっちでやってよ。ハハハ!

人件費高騰のおり、ご理解賜りますよう、村を代表してお願い申し上げます。
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ラハイナ・ヌーン


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カイルア・コナでは本日7月24日午後12時30分にLahaina Noonとなった。ラハイナ・ヌーンとは太陽が真上を通過する事。だから、影ができない。

南回帰線と北回帰線の間の地域だけに起きる現象。

ホノルルでは7月16日だったが、ハワイ島カイルア・コナでは24日。

年に2回起きる。次回は来年の5月18日。
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ハワイの日系人の英語とコナを牽引した偉人の話


201907 coffee & culture
雑誌「珈琲と文化」2019年夏号に拙稿が掲載されたのでHPに転載しました。ハワイの日系人の英語とコナコーヒーを牽引した偉人の話です。ご笑覧ください。


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コーヒー害虫の防御壁


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道を挟んで隣のコーヒー畑は害虫(CBB)の被害率ほぼ100%。害虫がこっちの畑へドンドン飛んでくる。うちの畑の端にはククイ・ナッツ並木を植えてある。これが害虫の防御壁。この十年で随分成長し、すき間がなくなったので、かなり有効に遮ってくれる。加えて、日々、虫食い豆を取り除いているので、今のところ虫食い率は0.1%以下に抑えている。

今年は雨が多く、ククイ・ナッツも凄い勢いで成長する。ガードレールをはみ出して枝が伸びた。これではご近所にご迷惑なので、定期的に枝を切る。チェーンソーで切っているうちに雨が降ってきたけど、どうにか終了。
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昼間でも金星の見える男、船附さん


201907 Funatsuki san
NY時代、トルコ人の同僚がいて、ビックリするほど頭脳明晰。エクセルの単純な数式とマクロを組み合わせて、複雑なポートフォリオ管理システムを構築した。パーツが単純な数式ゆえ、状況に合わせて、日々改良できる。全部手作りな所がすごい。加えて、単なる数学・システム屋ではなく、企業分析能力も優れているので、やがて、Bricoleurというヘッジファンドにパートナーとして転職していった。

ところで、Bricoleurとはフランス語でブリコラージュする人という意味。フランスの構造主義のレヴィ・ストロースの唱えたブリコラージュとは未開の人類が持っていた能力で、ありあわせの身の回りの物で必要な物を作ること。かのトルコの友人の仕事ぶりは現代のブリコラージュである。その転職先の名に妙に納得した。

ここ数年、沖縄県波照間島出身の船附さんに畑仕事を手伝ってもらっている。沖縄が日本へ復帰する前の波照間は、沖縄本島と違い、米軍は何の投資もしなかったので、彼は、電気も水道もない島で育った。だから、日常生活がブリコラージュ満載なのだ。

彼の住む家の前に、ハラの木の根の樹皮が干してあった。不思議に思っていたら、数日後に、縄になっていた。うわっ、ブリコラージュだ!紐ならホームセンターで1ドルもしない。もっと便利なバンジーコードだって買える。どうして紐を買わないのか尋ねたら、堆肥作りに木の枝葉を集める時、この縄で結べば運びやすいし、そのまま堆肥になるから便利だと言う。資本主義的効率主義に毒されていなくて、かつ合理的な精神だ。

コーヒーの収獲中、隣家の犬にしつこく吠えられた。船附さんは「黙れ!食べちゃうぞ」と怒鳴り返した。「えっ?波照間では犬を食べるの?」と尋ねたら、「昔は、食べ物が尽きたら、犬だって食べたさ」との答え。「牛肉は食べないの?」と尋ねたら、「牛や馬は食べない。大きい。」ときた。つまり、牛は屠っても親戚・近所で食べきれない。食べきれるサイズの動物しか食べないという。感動した。私はスーパーでそんな基準で肉を選んだことは人生で一度もない。Louise Gray著の「The Ethical Carnivore(倫理的食肉)」(邦題:生き物を殺して食べる)のような崇高な倫理環境で船附さんは育った。

畑の鶏に好かれていて、しょっちゅうじゃれ合っている。イザとなったら、鶏など絞めてしまう怖いおじさんのくせに、妙に鶏の信頼を得ている。

還暦を過ぎても恐るべき体力。その秘訣を尋ねたら、特製コーヒーエキスと特製ノニジュース。彼は、うちの畑のコーヒーの実をリキュールに漬けて、特製コーヒーエキスを作る。殺虫剤を使っていないから良いのだそうだ。これとうちの有機ノニ畑のノニで特製ノニジュースを作って飲む。それらがあれば、いくらでも働けるという。

朝から昼飯も食べずに作業していたら、雲が厚く薄暗くなってきた。何時だろうと思ったが、誰も時計を持っていない。妻は4時半過ぎだから今日は止めようという。私は2時半と主張。私と妻は疲れ果てて時間感覚などない。淡々と働いていた船附さんは曇り空を見上げている。どうやら太陽の位置を探っているらしい。5秒ぐらいして「3時45分」。それが5分と違わず正解。こんな曇り空でも太陽の位置が分かるなんて、まるで昆虫のような能力の持ち主だ。

前述のレヴィ・ストロースによれば、現代人は人類が本来持っていた能力を失っている。現代でも未開の地には昼間でも金星が見える部族がいて、昔は人類は昼間でも金星の位置を意識しながら生活していた証拠だそうだ。そして、我らが船附さんには、昼間でも金星が見えるのだ。金星どころか、土星まで見えるらしい。凄すぎる。

ところが、一緒にコーヒーを摘むと、私は害虫(CBB)の虫食いの実を選り分けて摘むが、彼は虫食いを素早く見分けられない。虫食いは、小さな穴を見つけるのが決め手。私は春から秋にかけて、畑の虫食いの実を取り除く作業をひたすら続けているので、少し離れていてもコーヒーの実の位置や顔色や形から、虫食いかどうか、なんとなく当りを付けられる。これには船附さんもビックリ。人間業とは思えないとお褒めに預かった。あの船附さんをして、人間業でないと言わしめた。かなり嬉しい。4万円の老眼鏡に感謝。

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