こんにちは。Tak Kahawai-Kula Nui です。このコーナーでは、食文化系、 優れもの系、自然エコ系、 ヒストリー系 、それのミックスなどを Tak 的に紹介させていただきます。
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 <01> ネネ /ハワイアンエコロジー(その1)
プロローグ
1775年のある日のロンドン、ポーカー好きのイギリス海軍大臣は、仲間と大好きなポーカーをしながら、ジェームスクック大尉を呼びつけ、
『大西洋と太平洋を結ぶ北極海ルートをみつけ、北太平洋を探検しなさい。そこの気候風土、住んでいる人、動植物、珍しい物、儲けの種になりそうなもの、全て報告しなさい』
と命令を下した。そこに、ダイニングルームのシェフが奇妙な食べ物が届けに来た。なんとパンに肉やポテトをはさんだグロテスクなものだった。シェフの眼は明らかに『いやいや』をしていた。『大臣ともあろうお方が、どうして私の腕を振るった料理をダイニングルームで食べていだだけないのだろうか?』しかし、無駄だった。大臣は既にグロテスクな食べ物を口のなかにほうばっており、ポーカーに夢中になっているのは明らかであった。クック大尉もシェフも黙ってその場を無言で引き下がるしか方法はなかった。
ハワイアンエコロジー(その1)

写真提供
Hawaii Tourism Authority(HTA)
Ron Dahlquist

ハワイの州花はハイビスカスであることは有名ですが、ハワイ州を代表する鳥『ネネ』様はさほど知られておりませんな。もっとも、一番人口が多く、州都ホノルルを抱えるオアフ島に生息している、またはいた、という記録が無いのでさもありなん。ということでしょうか?

でも、観光客がマウイ島のハレアカラ火山観光に参加したとき、クレーターの展望台に行く直前になってガイドがマイクに向かっていちだんとテンションを上げて説明するネタにあるのが、奇妙な植物、銀剣草(シルバーソード)とまさにこの州鳥『ネネ』様のことです。なんてたって、ネネ様は、国際自然保護連合のレッドデータブックなどには『Endangered』つまり現状のままでは種の存続が難しいという絶滅危惧種にリストされており、古代ハワイにもともと生息していた鳥達の半分以上が絶滅してしまい、さらに絶滅は進んでいる状態のなかで、一時は100羽を切ったが保護政策の結果、野生の状態で少しずつ個体数を増やし現在 1,000羽以上とも2,000羽以上とも言われている。

つまり、その意味でも世界で最も希少な雁(がん)であり、まさに種の復活のシンボルという事になり、その筋では一躍スタープレーヤーとして注目を浴びているのです。

学名は『 Branta Sandvicensis 』 〜 日本名は『ハワイ雁』と言います。

雁カモ類の『ネネ』様は、の故郷は地質学的には一番新しい島ハワイ島(ビッグアイランド)のマウナロア、マウナケア溶岩台地らしい。一時はビッグアイランドに限らずハワイ諸島の幾つかに数多く生息していたはず。しかし18世紀後半から狩猟、外国から流入した家畜や野生動物の被害に会い激減、ネネの大親分がこのままだと子孫がいなくなると危惧して伝説の火山の女神『ペレ』に祈りを捧げた結果かどうかは知らないが、ハワイ州が保護することを決め、1956年には州鳥と指定された。現在はハワイ島(ビッグアイランド)ボルケーノ国立公園、マウナロア、東のファアライ山中腹、マウイ島ハレアカラ国立公園、などの標高1,500位またはそれ以上の溶岩台地が主な生息地帯とされている。

頭部は黒、体全体はブラウンのコーポレートカラー、体長約60cm,首にたんざくを巻きつけたような独特の羽毛(成鳥)のデザインの衣装を身に着け、葉っぱや、草の実、果物など食べます。『ネネ』様は不思議な鳥です。ハワイ諸島を発見したクック船長の時代以前から、つまり外国人がハワイに家畜や野生動物を放つそれ以前から、どうも現在と変わらないような生活をしていたと思われるからです。

まず、動きが鈍い、つまりノロマ。とにかく野生の鳥としての俊敏性をほとんど持ち合わせていない。それに空を飛ぶのもあまり上手でないようだ。雁行(群れでV 字型に飛ぶ)の写真でもあるなら拝見したい位である。雁、カモの仲間であるので、一応水かきも持っているので水辺や湿地帯のほうが生活し易いと思うのですが、よりによって山の高いところに棲み、しかも食料の乏しい溶岩台地で生活しているのです。

特にハワイ島のマウナロア山、マウイ島のハレアカラ山は低地と3気圧違います。最初は低地に棲んでいたのだが、何者か(つまり天敵のようなヤカラ)が生活を脅かし、逃れて逃れまくったところが高地だった。という説が主流らしいのですが、でもハワイには元来そんな凶暴なヤカラはいないはずなんです。

ハワイアンエコロジー(その1)

ハワイ名『 Nene 』
英語名『 Hawaiian Goose 』

写真提供
Hawaii Visitors and Convention Bureau
Chuck Paiter

いたち(マングース)はもともとハワイにはいなく、パイナップルの根っこを食い荒らすねずみを退治するためハワイに放っただけですし、野生の猫もいなかった。猿もいない。鳥類でもこの大型のネネ様とタイマンで勝負できる鷲や鷲もいない筈なのであります。

ハワイ島も深い森林地帯がありますし、マウイ島は渓谷の島といわれるぐらいで低湿地帯も多く、野生動物の食料戦争が広範囲に行われる可能性も少ないのです。とにかく動作が鈍い、ろくすっぽ飛べない、おもに溶岩台地に棲み家にしているためか水かきが少し退化しているので泳ぎも下手。しかし、いつの間にか、溶岩の上でもずっこけて転ばないように、他の雁カモ類にない太い足と丈夫な爪を装着している(溶岩は見かけ表面がゴツゴツしていても、非常に滑りやすい。時々ゴルファーが溶岩のなかにOBしたボールを拾いに行き怪我をする)

という訳で、テレビじゃないけれと『世界不思議発見 ネネ ミステリー物語』 なーんちゃって??

ミステリーは続くのです。最近といっても 10数年ぐらい前ですが、ハワイの日刊紙、HONOLULU ADVERTISER の1面のデカデカと写真入りで『カウアイ島にてネネ発見さる、という記事で出ました。記事の詳しい内容は忘れましたが、要はいままで、マウイ島とハワイ島の高地にしか、生息していないと信じられていたが、別の島、カウアイ島にもいたんだね。よかったね。という記事だったと思います。

興味深いのはその発見された場所が確か低地(LOWLAND)であったことです。

このニュースには、もうひとつ面白い話が続きます。ゴルフ大好き人間で時々カウアイ島のビーチ沿いのゴルフコースでプレイをしていた人がおりました。その新聞を見せると、『へえー、こいつがネネなんだ。俺なんかゴルフ場でこいつらに時々会ってたよ。フェアウェーにでてきたり、ティーグランドに出て来たり、邪魔なんだよ』といとも簡単に言われました。

その人によれば、ゴルフコースには通常、普通のゴルファーが使用するレギュラーティーとかリゾートティーと言うティーグランドがあり、同時に正式な試合用、つまりトーナメントティーとかブラックティーと称するグリーンに向かって一番距離の遠いティーグランドがあります。このトーナメントティーグランドは普段はほとんど使用されないので、あまり手入れがされていません。

ミステリー・オブ・ネネ(ハワイ州鳥)

写真提供
Hawaii Tourism Japan(HTJ)

芝の伸び放題になっている場合が多いのです。そこに『ネネ』が営巣しているのを見たと言うのです。一瞬膝から下の力が抜けてしまった記憶があります。つまり、もともとカウアイ島に居たけど、責任ある人の報告や写真でないと信用できないから、いない事になっていたのか? それとも、州政府の保護活動のおかげで、マウイ島かハワイ島にいたネネが、わざわざ間にあるオアフ島の飛び越してカウアイ島に住み着いたのか皆目わからないのであります。

もし、それだけの飛翔力があるのなら、何故オアフ島に下りて一休みしなかったのか、カウアイ島まで行かなければならなかった理由が説明つけ難いのであります。それとも誰かが密かにハワイ島かマウイ島から連れて行って放したのでしょうか?

さらにカウアイ島はハワイ諸島のうちで、ほとんど最初に出来た島で、ガーデンアイランドと呼ばれるぐらい緑が多く溶岩が露出している場所は他の島に比べて少ないはずなのであります。元来、高地に棲む雁だったのか、追われて高地に生活場所を求めて移ったのか、それで丈夫な足と爪が発達したのか、何故低地にもいるのか? だったら、何故、水かきが少し退化しているのか? 各島のネネ様達は移動したのか、していないのか?

この『ミステリー・オブ・ネネ』永遠に続きそうであります。

ハワイをレンタカーなどでドライブする皆様は道路に黄色い看板に『ネネ様』の絵が描いてある標識を見たら注意してドライブしてください。ネネ様が道路にノコノコお出ましになる場合があります。またゴルファーの皆様、フェアウェーに『ネネ様』が出ていたら、皆さんの豪快なショット打つのを彼らが溶岩の中に消えるまでちょっと間お待ちください。とにかくノロマなのです。もちろん愛すべきという形容詞をつけて。


エピローグ
海軍省でシェフに命じてパンに肉やポテトを挟んだ当時としては奇妙な食べ物をほおばりながらポーカーを続け、キャプテンクックに『北太平洋を探索して来なさい』と命令を下したお偉いさんの名前は『サンドイッチ伯爵』。サンドイッチはこのオジサンが食べる間も惜しんでポーカーをするために、無理やり創らされた食べ物だったのである。またキャプテンクックはハワイ諸島を発見した当時、この島々を自分の上司であるポーカー好きのオジサンの名前を取ってサンドイッチ諸島と命名しました。そうです。『ネネ様』の学名をもう一度良く御覧ください。その名はBranta Sandvicensis もしくは Nesochen Sandvicensis。

おもな参考資料
アロハ年鑑 ハワイ報知社発行
HAWAII'S BIRD Hawaii Audubon Society
世界大博物図鑑 別巻1 絶滅希少鳥類 荒俣 宏著
協力 ビッグアイランド観光局
協力 日本野鳥の会 小林 豊様

 

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